COLUMN
<第11号>

「合名会社・合資会社の経営リスクに備える」

- はじめに -
 平成3年4月に施行された商法改正以前に設立された合名会社や合資会社は、歴史も財産もある会社として、社会的に高い評価を受ける会社が多くありました。しかし、改正以降は、従来の信用ある会社と個人的規模で小資本の会社とが混在して誤解を受けやすくなり、イメージが以前とは変わってきております。
 また、合名・合資会社から株式会社への単純な「組織変更」が認められていないことから、問題解決されないまま、諦め、現在に至っている会社や、営業譲渡などで会社を分け、そのまま合名・合資会社が残っている状況も見受けられます。

合名・合資会社の経営リスクに備える

1)無限責任社員の死亡時に解散の危機
 無限責任社員は、商法により死亡と同時に退社する旨の規定があり、その地位は、定款に別段の定めを置かない限り相続できないため、無限責任社員が1名の場合、会社は解散となります。その結果、資産の多い会社は出資の払い戻し請求額と、清算決算による多額の法人税で事業廃止になる危険性があるにも関わらず、何ら改善策が打たれていないのが現状であります。
2)出資者の問題点
 出資者である社員には退社制度があり、いつでも自己の持分の払い戻しを会社に対し
て請求する事ができます。払い戻し金額の算定に際しては、含み益に対する法人税等相当額の控除は行われず、よって過重な資金の負担がかかることになります。出資払戻し請求にからんだ裁判も多くなっているようです。
 また、現在の出資者が高齢化しつつある中、将来、相続等の発生によって生じる問題を、今から検討しておく事も重要です。有限責任社員の出資持分は相続されることになっているため、将来、相続等が発生した場合、有限責任社員の地位は、次世代に引き継がれます。地位を受け継いだ有限責任社員は、会社の経営に参加するか、若しくは、経営に参加しないで出資分の払い戻しを請求するか、どちらかの選択をする必要があります。どちらも、今後の会社経営には大きく影響することになると考えられます。
3)重要な決議は社員全員の同意が必要
 商法において合資会社は、経営に関する重要な決議には、社員全員の同意が必要とされています。これは、全社員の同意が得られないと重要な経営の方針が実行できないというデメリットにもなります。例えば、事業承継により新しい経営者に代わる場合、社員の中のひとりでも反対者があれば、実行できません。その他、合資会社の不動産売却や、金融機関の融資、グループ会社への担保提供などの決議にも、同様に当然社員全員の同意が必要となります。
 
 さらに、無限責任社員は、将来、万が一会社が倒産するような場合も、会社の債務者に対し連帯して弁済する義務を負います。そのため、個人の財産を失う危険性があります。。
4)まとめ
 以上の主な理由から、今後の事業経営が円滑に図られ、将来の継続に備えることを目的として、合名・合資会社の株式会社化への取り組みをお勧めしています。株式会社化された場合は、更にここ数年の法律改正により、企業組織の再編・再生についても幅広い選択が可能になると考えられます。

専門家プロフィール
野尻名津子

【プロフィール】
日本CFO協会認定 General CFO

【得意・専門分野】
中小企業の事業承継・資産承継・資本対策をはじめ会社及び個人の財務状態の診断、運用・指導・調査その他資産運用及び財産管理に関するコンサルタント業務

【株式会社 名津財務総研】
〒456-0034 名古屋市熱田区伝馬三丁目8番8-1002
TEL 052-683-7778  FAX 052-683-4081   E-mail ec21@ecall.co.jp

【バックナンバー】

▲PAGE UP

〒450-0002 名古屋市中村区名駅5-16-17 花車ビル南館9F
TEL:(052)485-8271 FAX:(052)485-8272
E-mail:office@j-partner.com
ご注意:このサイトはIE5.5またはNN6.1以降のブラウザでご覧下さい。
     これ以前のバージョンではレイアウト崩れ等の不具合を起こす可能性があります。